2018年10月10日
象の鼻テラス開館10周年記念企画
「フューチャースケープ・プロジェクト」
募集要項発表会 アーティストトーク レポート

開催日時:2018年10月10日(木)16:00-20:00
会場:象の鼻テラス

ゲストアーティスト:鈴木康広、椿昇

横浜開港150年に合わせて整備された文化観光拠点「象の鼻パーク」と「象の鼻テラス」。10周年となる2019年6月にむけて進めている「フューチャースケープ・プロジェクト」の募集要項説明会を10月10日に開催しました。

この日より、アーティストだけでなく多様な市民からもアイデアを募りはじめたプロジェクトの概要説明はもちろん、象の鼻テラスにゆかりの深い2人のゲストアーティストによるトーク、 公募プロジェクトの一例紹介としてケースプロジェクト・プレゼンテーションを行いました。レポートは、アーティスト・トークの様子を中心にお届けします。


アーティストのアイデアが街を変える

トークのテーマは、「アーティストのアイデアが街を変える」。ゲストアーティストの2人は、それぞれ象の鼻テラスを舞台にシンボリックな作品を制作しています。

椿昇さんは、象の鼻テラスが開館となった2009年に常設作品《時をかける象(ペリー)》を制作。この日も会場の後方でトークの様子を見守っていた、大きな作品です。このペリーの子どもにあたる、車両進入禁止を示すくるまどめ《ペリコ》も象の鼻パークの入口に設置されています。

Photo: Katsuhiro Ichikawa
Photo: Katsuhiro Ichikawa
Photo: Ken Kato
Photo: Ken Kato
また、鈴木康広さんは、2012年に《未知への鼻》というタイトルで、象の鼻テラスの屋上に、空高くに伸びる巨大な「象の鼻」を期間限定で出現させるランドマークのような作品を制作しています。

Photo: Ken Kato
Photo: Ken Kato


日本におけるパブリックの課題

まずは椿昇さんより、ご自身の作品や、活動を通して考えてきたパブリックについてのお話しをいただきました。〈横浜トリエンナーレ2001〉でインターコンチネンタルホテルの外壁に設置した巨大バッタ型バルーン《インセクト・ワールド-飛蝗》にはじまり、十和田市現代美術館におけるコミッションワーク《aTTA(アッタ)》、地球温暖化の問題とその背景にある原発の推進をとりあげた2010年の〈六本木アートナイト2010〉における作品、「霧島アートの森」における2012年の個展など。どんな国にもタブーはあるが、特に2011年の福島の原発事故以来、日本の美術館などではポリティカルな作品を発表するのは難しい状況になってきていると言います。

その中で、2017年に種子島を舞台にした〈種子島宇宙芸術祭〉では、バルーン型の作品《mammalian(マーマリアン)》を持ち運びながら、島内の様々な場所を訪れるプロジェクトを行いました。自分たちが出会うことのできた、島の独自の環境の中だからこそ成立している匿名的な美を写真に捉える一方で、それぞれの場所で、美術を見に来たのではなく、偶然出会ってしまった人たちと交流し、彼らにとってそれがどのような体験だったのかについて考える時間を過ごしたそうです。

イベントの様子1
他には、京都大学における立て看板の撤去問題が象徴しているように、日本では捉え方を少し変えるだけで観光資源にもなりうるような文化遺産が平気で壊され、街が次々と、小綺麗で個性のないものになってきている点を課題に感じていること。一方、ワークショップの講師として訪れた中国の広州では、ファッションを学ぶ学校の周りに生地問屋や工場がたくさんあり、飲食店も安くて美味しく、街がごちゃごちゃしているけれども、その気になれば短期間でものづくりに没頭することのできるダイナミズムにあふれていた。また、そこで出会った学生たちからは、インターネットのSNSなどを通して世界中の様々なローカルで面白いものと直接つながり、あっという間に自分たちの環境に取り入れている様子を感じたことなどをお話しいただき、以下のような言葉でプレゼンテーションを締めました。

イベントの様子2
「パブリックや街の力が何なのか考えた時に、日本ではそのダイナミズム、根本的なとこにあるエネルギーを失ってるのでないかなと思います。僕や僕から上の世代がもうあと15年とかでいなくなっていく頃には、産業構造とかも全部変わっているはずですが、それに向けた準備が社会全体でできていない。借金だけ増やしながら、問題を全部先送りにしている気がするので、パブリックは大丈夫ですか、ということを問いたいです」。


時間の尺度を捉えなおす

続いて鈴木康広さんのプレゼンテーションです。まずは、2012年に制作した《未知との鼻》について。イメージとしては、象が地中に埋まっていて、鼻だけが地表に出て、宙に浮いたりんごに向かって伸びているという作品。象の鼻テラスのランドマークになるような、機能性を求めたプロジェクトでした。様々な場所から目にすることのできる作品は予想以上にSNSなどで拡散され、自分の意図を離れていろんな人の視点で捉えられた点を面白く感じたそうです。

イベントの様子3
続いてNHKの番組「デジスタ」で発表した、公園の遊具に映像を投影した作品《遊具の透視法》(2001)と、葉の形をした用紙が宙を回転しながら舞うことでまばたきをしているように見える《まばたきの葉》(2003)など代表作の紹介。そして、公園にある蛇口から水が噴出する様子を映像に捉えた《蛇口の起源》(2006)など、時間の尺度を捉えなおす、誰もが見たことのある風景に遊び心を加える、観客が関わることで新たな発見があるなど、「フューチャースケープ・プロジェクト」にもヒントを見出すことのできそうな作品が紹介されました。


パブリック・スペースにおける活動としては、東京大学でアーティストの岩井俊雄さんのアシスタントをしながら携わった、メディア技術とパブリックアートを融合するプロジェクトについて。羽田空港ターミナルで開催した展覧会ではアートディレクションを担当した「空気の港~テクノロジー×空気で感じる新しい世界~」(2009)や、そこで発表し、その後も世界各地で発表している《空気の人》についても紹介。作品を目にした人の思いがけない反応があったり、「作品と一緒に昼寝をしてみる」など、作家自身では思いつかなかったような企画が生まれ、予想を超える経験をできるのが醍醐味だと言います。

イベントの様子2
〈瀬戸内国際芸術祭〉(2010)などで発表し、2018年12月、隅田川流域を舞台に実施される『ふねと水辺のアートプロジェクト』で見ることのできる《ファスナーの船》は、元々は飛行機から見た海の上を走る船が、ファスナーを開いているように見えた見間違いから生まれているそうです。

「今回とても興味深いなと思ったのは、(アイデアの単位を)10秒から募集するという点です。往復する時間の設定を1秒から1万年まで変えることができるメトロノームの作品も制作しているのですが、時間を意識するだけで、目の前のものの見え方が変わります。」とプロジェクトへも関心を寄せていただきました。


2人のプレゼンテーションの後には、象の鼻テラス アートディレクターの岡田勉、小泉アトリエ主宰で象の鼻パーク・テラス設計者の小泉雅生のコメントを挟み、椿さん、鈴木さんそれぞれに、パブリック・スペースにおけるプロジェクトへの心構えなどをうかがいました。

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主催
象の鼻テラス
共催
横浜市
プロジェクトパートナー
小泉アトリエ、abanba、ノマドプロダクション


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